大学進学で「こんなはずでは」を防ぐ 学費以外の費用と準備のリアルな声
大学進学、見落としがちな学費以外の費用とその備え
お子様の大学進学を控える親御さんにとって、教育費は大きな関心事の一つではないでしょうか。特に、大学の学費については多くの方が情報を集め、計画を立てていらっしゃるかと存じます。しかし、実際に大学進学を迎えた家庭からは、「学費以外にも予想外に多くの費用がかかった」「こんなはずではなかった」という声も聞かれます。
この「みんなの教育費白書」では、アンケートやインタビューを通じて得られた、実際の家庭の教育費事情や価値観に基づいた情報を提供しています。今回は、大学進学で特に見落とされがちな学費以外の費用に焦点を当て、実際にそれらの費用に直面した家庭がどのように準備し、工面したのか、そのリアルな体験談をご紹介いたします。
1. 入学前にかかる「初期費用」の実態
大学進学には、学費の支払い開始に先立ち、まとまった初期費用が必要となります。これらは意外と高額になり、計画的な準備が不可欠です。
(1) 受験費用とその周辺費
一般的な大学受験では、共通テストの受験料に加え、各大学の個別試験の受験料がかかります。あるご家庭のケースでは、共通テストと私立大学3校の受験料だけで合計約15万円ほどかかったと話されていました。さらに、遠方の大学を受験する場合、交通費や宿泊費も発生します。
- 事例: 「地方在住のAさんご一家は、お子さんが首都圏の大学を複数受験したため、受験料約12万円に加え、交通費と宿泊費で約10万円の出費がありました。合計で20万円を超える費用が受験だけでかかってしまい、この分の捻出に苦労したと振り返っています。」
(2) 入学金・施設設備費など
合格後、入学手続きには入学金や前期の授業料、施設設備費などが求められます。国公立大学の場合、入学金は約28万円程度、私立大学では20万円から30万円台が一般的です。授業料と合わせると、国公立大学で約80万円、私立大学では文系で約100万円、理系で約120万円といったまとまった金額が、入学時期に一括で必要となるケースが少なくありません。
(3) 一人暮らしにかかる初期費用
自宅外から通学する場合、敷金・礼金、仲介手数料、前家賃といった住居の初期費用に加えて、家具・家電の購入費用も必要です。
- 事例: 「地方から上京したBさんのお子さんの場合、家賃約6万円のアパートを借りるにあたり、敷金・礼金、仲介手数料、前家賃で約25万円。さらに冷蔵庫、洗濯機、ベッド、机などの家具・家電で約15万円かかりました。入学金等と合わせ、入学前だけで総額150万円近い費用が必要となり、親御さんは貯蓄の多くを取り崩して対応したそうです。」
2. 入学後に継続的にかかる「生活費・雑費」
入学後も、学費以外に毎月または定期的に発生する費用があります。これらは年間の総額で考えると、学費に匹敵する、あるいはそれ以上の負担となることもあります。
(1) 仕送り・家賃・生活費
一人暮らしの場合、家賃、食費、光熱費、通信費、交通費などの生活費がかかります。日本学生支援機構の調査によると、自宅外通学の学生への仕送り額の平均は月額約7万円から10万円程度とされています。年間で考えると、80万円から120万円にもなります。
- 事例: 「Cさんご夫妻は、自宅を離れて暮らすお子さんに月10万円の仕送りをしています。これは家賃(約5万円)と生活費(食費、光熱費、通信費など)に充てられているそうです。年に換算すると120万円となり、学費と合わせて年間200万円を超える教育費を捻出されている状況です。」
(2) 教科書代・教材費・課外活動費
大学では、専門分野の教科書や参考書、実験・実習費用、パソコンなどの購入も必要です。また、サークル活動やゼミ合宿、友人との交際費なども見逃せません。これらの費用は、年間で数万円から数十万円になることがあります。
- 事例: 「理系学部に進学したDさんのお子さんは、パソコンやソフトウェアの購入で約20万円、実験着や専門書で年間約5万円の費用がかかりました。さらに、長期休暇中の語学研修に参加し、別途約30万円を自己負担したそうです。これらの費用は学費とは別に、その都度準備が必要となりました。」
3. 学費以外の費用を工面するための具体的な工夫と選択肢
これらの見落としがちな費用をどのように準備し、工面していけば良いのでしょうか。実際に多くの家庭が実践している具体的な工夫や選択肢をご紹介します。
(1) 家計の見直しと貯蓄計画
まずは、現在の家計状況を把握し、無駄を削減することが基本です。通信費の見直し、食費の管理、固定費の削減など、家庭全体の支出を見直すことで、教育費のための貯蓄余力を作り出せる可能性があります。
- 事例: 「Eさんご夫妻は、お子さんの大学進学を機に、夫婦の携帯電話料金プランを見直し、格安SIMに切り替えることで年間約10万円の節約に成功しました。この費用は、お子さんの受験費用に充当したそうです。」
(2) 奨学金と教育ローンの活用
学費だけでなく、受験費用や入学時費用、一人暮らしの費用など、幅広い教育関連費用に充当できる支援制度があります。
- 奨学金: 日本学生支援機構の奨学金は、給付型(返済不要)と貸与型(返済必要)があります。貸与型は無利子(第一種奨学金)と有利子(第二種奨学金)に分かれ、月々の生活費を支援する目的で借り入れることも可能です。
- 体験談: 「Fさんのお子さんは、自宅外通学のため、日本学生支援機構の第二種奨学金を月額5万円借り入れました。これにより、親からの仕送りの負担を軽減し、お子さん自身も卒業後の返済を意識して生活するようになったと話されています。」
- 国の教育ローン: 日本政策金融公庫が提供する「教育一般貸付」は、受験費用、入学金、授業料だけでなく、在学のためのアパートの敷金・家賃、教科書代、通学費用など幅広い用途に利用できます。比較的低金利で、最長18年の返済期間が設定されています。
- 体験談: 「Gさんご夫妻は、お子さんの入学金と一人暮らしの初期費用が高額になったため、国の教育ローンで100万円を借り入れました。金利も低く、返済期間も長く設定できたため、毎月の負担を抑えながら計画的に返済を進められていると伺っています。」
- 民間の教育ローン: 銀行などの金融機関が提供する教育ローンも選択肢の一つです。国の教育ローンよりも借入限度額が高いケースや、手続きが比較的早い場合もありますが、金利は高めになる傾向があります。
これらの制度は、利用条件や審査がありますので、早めに情報収集し、比較検討することが大切です。
(3) 親自身の働き方や副収入の検討
お子さんの進学時期に合わせて、親御さん自身の働き方を見直したり、副業を検討したりするケースも見られます。
- 事例: 「Hさんのお母様は、お子さんの大学進学を機に、これまでパートタイムで働いていた職場での勤務時間を増やし、正社員として働くようになりました。これにより収入が増え、教育費の貯蓄ペースが上がったと話しています。」
(4) 親子の協力体制
教育費は親だけの問題ではなく、お子さん自身も巻き込むことで、より具体的な対策が可能になります。アルバイトによる学費・生活費の補助や、奨学金返済への意識付けなども、家族全体で教育費に向き合う良い機会となります。
- 事例: 「Iさんのお子さんは、大学入学後、学業に支障のない範囲でアルバイトを始め、月数万円を自身の生活費や交際費に充てるようになりました。親御さんは、『子どもが自分で稼ぐ経験をすることで、お金の大切さを実感し、無駄遣いが減った』と語っています。」
まとめ:計画的な準備と多様な選択肢の検討を
大学進学にかかる費用は、学費だけでなく、受験費用から入学金、そして一人暮らしの生活費に至るまで多岐にわたります。これらの費用を事前に把握し、計画的に準備を進めることが、「こんなはずではなかった」という事態を避ける鍵となります。
ご紹介した事例のように、多くの家庭がさまざまな工夫を凝らし、多様な制度を活用しながらお子さんの夢を支えています。ご自身の家庭の状況に合わせ、どのような選択肢があるのか、どのような工夫ができるのか、改めてご家族で話し合い、検討する機会としていただければ幸いです。
最終的な判断はご自身の責任において行われるものですが、本記事がその一助となれば幸いです。